真・ホドリゴ日記

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お母さんはダッチワイフ

母が死んで、もう3年が経とうとしていた。

それは私がまだ小学生の頃だった。病院で、葬式で、人目もはばからず私は大泣きしたそうだ。
でも、私はその時のことをよく覚えていない。
母が死ぬ前後の記憶がすっぽり抜け落ちている。
記憶から消すことで、大好きな母が死んだという現実から目を背けているのかもしれない。

母が死んで、迎えるはずだった反抗期。
それも、私にはすっかり抜け落ちていた。
親や教師や大人に対する不満はあったが、私は一環して優等生だった。
いや、優等生を演じ続けていた。

これは、そんな私が普通の反抗期を取り戻して大人に近づく話である。


「おかえり」

ある日、中学校から帰ると、いるはずの無い女性の声で私は迎えられた。
「父が誰かつれてきたのだろうか」
そう思ったが、母が死んで以来、父は意図的に避けているのではないかと思えるくらい女性との縁は全くなかった。

台所に入ると、キッチンに向かってダッチワイフが立っていた。
「信じられない」
いくら母がいなくて淋しいからといって、こんな卑猥なものに手を出すなんて、許せなかった。

「ただいま」
父が帰ってきたので、すぐさま私は猛抗議した。
「ひどいよお父さん、あんなもの買って置いとくなんて!」
ダッチワイフの方を指さして私は泣きながら叫んだ。

「なに言ってるんだ、あんなものだなんて。お母さんに謝りなさい」
本当に信じられなかった。
「あらふたりともお帰りなさい。どうしたの帰って早々騒々しい。もうすぐごはん出来るからね」
ダッチワイフが振り返って言った。

どうやら、父はあのダッチワイフのことを本気で母と思っているようだ。
父と娘とダッチワイフとで食卓を囲む風景は異様なものだった。
不思議と、ダッチワイフが作った料理のは確かに幼い頃食べた母のそれと一緒だった。
私は、しぶしぶダッチワイフの作ったごはんを食べ、早々と自分の部屋に戻って閉じこもった。

次の日も、その次の日も、ダッチワイフは家にいた。
私は、気味の悪い人形が我が物顔で我が家に居座っているのは嫌だったが、
父がとても幸せそうだったので、次第にまぁいいかと思うようになっていた。

「今度の土曜日、何着て行こうかしら」
「今度の土曜日って?」
「何言ってるの、授業参観の日じゃない。お父さんは仕事で行けないけど、ちゃんとお母さんが見ててあげるからね」
迂闊だった。
母が亡くなって以来、授業参観はずっと父が都合をつけて来ていた。
勿論今回も父が来ると思い込んでいたが、今回は事情が違うということを忘れていた。
ダッチワイフが登校して、騒ぎにならないだろうか。
私に打つ手は無かった。

参観日当日、当然のようにダッチワイフが教室に入ってきた。
不思議と、騒ぎにはならなかった。みんな、そういうものだと思っているのかもしれない。
でも、私は恥ずかしかった。
ダッチワイフが私を見に来ているなんて、耐えられなかった。
ダッチワイフは私を見つけてニコニコしているが、私は必死で知らないフリをした。

うちの学校では授業参観の日は、見に来た親と一緒に帰る生徒と、いつも通り友達同士で帰る生徒にわかれる。
父が来ていた時は、父が気を利かせて先に帰り、私は友達と帰っていたが、今回はどうだろうか。

終礼が終わり、教室を出ると、子供の帰りを待っている親が廊下に溢れている。
私は、ダッチワイフに見つからないようにコソコソ帰ろうとしたところで呼び止められた。
「待ってたわよ、一緒に帰りましょう♪」
ダッチワイフだった。
どうやって振り切ろう、考えを巡らせている私に担任の先生が声をかけた。
「さようなら、お母さんと一緒に帰れてよかったね」

「こんなの、お母さんじゃないもん!」
つい、大きな声で言ってしまった。
「こら、なんてことを言うんだ!」
先生も声をあげた。
「ごめんね、お母さんと一緒に帰るの恥ずかしいんだね。ごめんね。」
ダッチワイフが消えそうな声で言った。
私は、振り返らずに走って学校を出て行った。

その日、私は家に帰りづらくて、友達の家に寄ったりして遅くになってから家に帰った。
「お帰りなさい。遅かったわね。」
ダッチワイフは、何事もなかったかのように、いつも通りごはんを作って待っていた。
私は、うつむきながらご飯を食べ、食べ終わるとすぐ自分の部屋に戻った。

その夜、私は寝付けずにいた。
ダッチワイフは、どんな思いをしたんだろう。
参観日の前日、ダッチワイフがニコニコしながら服にアイロンを当てている姿を思い出した。
そういえば、母は生前も病気がちだった為に参観日に来られたことはなかった。

ホットミルクでも作って飲もうと思い、台所に向かうと、食卓の椅子に座って後ろを向いているダッチワイフの姿があった。
肩を震わせている。
どうやら、泣いているようだ。
私は、その後姿を見て、たまらなくなった。

「お母さん、ごめんね!」
私は、そのダッチワイフのことを初めて「お母さん」と呼び、そして抱きしめた。
「いいのよ、いいのよ。。」
母は、笑って私を許してくれた。

それから、私と母はベッタリ仲良くなった。
一緒に買物に行ったり、勉強や恋の相談にのってもらったりした。
父がヤキモチを焼くぐらいに、私たちは仲良し母娘だった。

ある日、私が母と公園を散歩している時のことだった。
「危ない!」
私が犬の糞を踏みそうになり、よろけたところを母にぶつかってしまった。

母はそのまま木の方によろけ、木の枝が刺さって、そこから空気が抜けてバビュンって飛んでいった。

やっぱりアレはただのダッチワイフだったようだ。

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  1. 2011/06/21(火) 22:29:14|
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